第一章 西からの景色

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 海都、私、あなたと人生を歩みたかった。歩めると信じていた。 でも――  あなたは違う人を選んだ。それが誰であれ、私は見守る。それはあなたのためじゃない。私のため。  私が自分を惨めに思わないように、強く正しくいられるように、自分を好きでいられるように。  でも、少しだけどこかで泣かせてほしい。声をあげて、子供のように……。その涙と一緒に、あなたへの思いを流してしまうから。  赤い西日は私の涙を隠してくれるだろうか? 私は、どこで泣いたらいいのだろうか?  最後にあなたの背中を借りておけばよかったと思う。あなたの、大きな背中を……  もう、前に進まなきゃ。  赤い西日をブラインド越しに見つめながら、誰にも見られないように、私の頬には一筋の線ができていた。
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