第二章 東からの景色

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 水族館にある巨大な水槽の中が青いのは、あの、広く青い海を模しているから。  もしも俺の頭の中身を、全てこの青い中に溶かしてしまうことができたなら、俺は、普通に戻れるのかもしれない。  闇の中から目覚めた東の空は、朝の光に青く染められていく。  彼女との出会いと別れが必然だったというのなら、俺はその思い出の全てを青い光に染めて、永遠に、青い水槽の中に閉じ込めてしまいたい。  記憶はすべて、青く染めて、綺麗な水に溶かしたい。
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