第二章 東からの景色

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 青い水槽は、俺の中の桜の思い出をアルバムのように整理してくれる。  俺はもう大丈夫、君を思い出にできそうだ。だから、桜も俺を思い出にして、ちゃんと覚えててくれよ。  君のその青い瞳に、兄貴の代わりの男じゃなくて、東堂悠っていう男と過ごした時間をうつして。  君に触れられなかったことは、後悔していない。  俺と言う存在を身体ではなく、心に刻んでくれたならこんなに、嬉しいことはない。  俺は君と約束した通り君を思い出にして、新しい道を歩いていく。  さよなら、桜、俺の好きだった人。きらきらとした思い出をありがとう。 「みなみさん!」  水族館の前で俺を待つみなみさんの名を呼んだ。俺を見つけてにっこりと微笑むみなみさん。間違いじゃない、彼女が俺の、選ぶべき人。
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