第三章 南からの景色

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 白いみなみの背中が今まで以上に愛しいのは、俺の心が飢えているから。  みなみ、俺は今からおまえに残酷な嘘をつく。おまえに決して消えない傷をつけて、おまえに死ぬまで憎くまれて、ずっと記憶の中にいたいと願うから――  おまえの記憶の中に、俺が真っ白な雪のように積もって、募って、決して溶けてなくならない、南の海に浮かぶ氷のように、永遠に残る痛みになりたい。
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