第四章 北からの景色

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 長い参拝客の列に並んで、お参りをする。私は、悠に出会わせてくれて、ありがとうございましたと、願いではなく、感謝を神様に伝えた。 「何をお願いしたの?」  帰り道に悠に尋ねてみる、だって、すごく真剣な顔でお願いしていたから。そしたら、 「桜の卒業試験がうまくいきますように」  だって! もう、なんてお節介なの! でも、本当に優しい悠。いつでも私のことを考えてくれる―― 「なにそれ、お節介だなぁ」  どうしよう、私……別れたくない……。でも、ダメなの。だから、どうか―― 「ねぇ、悠、私のこと覚えていてね」  悠の大きな手をぎゅっと握り返しながらそうつぶやいた。私には、もう、こんなことしかできない。 「桜、俺……」  悲しそうな、悠の顔――。ねぇ、悠、私とおんなじ気持ちで、いてくれてる? 「悠」  私は悠の言葉を遮って名前を呼んだ。悠をまっすぐに見つめて、私の意志を込めて。 「たくさん思い出を作ろう! あと三ヶ月、たくさんたくさん!」  どうしよう、涙がこみ上げてくる。こんな気持ち、初めてだよ。  悠は何も聞かずに頷いてくれた。優しい悠、私の大切な人。これは、たぶん恋心じゃないけれど、この優しい温かな気持ちは、なんていうんだろう。  悠、大好きだよ――この気持ちを、忘れたくない。この優しい感情を、失くしたくない――!  別れまでの三ヶ月、私は今までの人生で一番楽しかったと思う。卒試の勉強もほどほどに、私たちはいろいろなところに出かけた。水族館も楽しかったけれど――  ねぇ、悠、私、行きたいところがあるの。一緒に行ってくれる?
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