第四章 北からの景色

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 空港に向かう途中、車窓から見える景色をぼんやりと眺めるしかない私――あぁ、飛行機に乗っていったいどこに向かうのだろう。  赤信号で止まった時に、ふと、茶色い髪の毛の背の高い男の人の姿が目に留まる。  あれ、私、あの人を知っているような……  あてにならない記憶を探っても、答えは見つからない……  あ――!  私は車の窓を開けた。 「はるか!」  叫ぶとともに、信号は青になって車が発信する。私の声は彼に届かなかったかもしれない。でも、温かい気持ちが心に広がっていく。  悠、私の大切な人だ。大丈夫、ちゃんと覚えている。
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