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第一部
大学二年生のころ、俺は彼女に出会った。彼女と出会ったのは冬の寒さが残り、まだ肌寒い3月のことだった。
俺たちは友達の友達が連れてきた友達という形で初対面した。
映画好きの友達と二人で見に行く予定だった作品にそいつの気になっている人も誘いたいという話から始まった。その気になっている子というのも数か月前からそいつが狙っている子でちょっとした関わりから少しずつ近づいていき、つい最近映画の趣味が同じだ、ということが発覚したそうだ。どうしても誘いたいと言う友達に俺は強く反対することが出来なかった。それとは別にどこかしら断られるだろうという楽観的な考えもあった。男二人にまざるのは普通に考えれば、とうてい無理な話だ。だからOKを貰ったという話を友達から聞いた時は持っていた食堂のお盆をひっくり返しそうだった。順を追って話を聞くとなるほど納得する内容だった。
要するに彼女も友達と件の映画を見る予定だったのだそうだ。四人で見るということなら、と一緒に行くことを了承してくれたらしい。それでも、わざわざ誘いを受けたのはどうしてか気になるところではあったが女とはそういったものなのだろうか。謀らずも二対二の合コンのような形になってしまった映画鑑賞は友達にとって好都合だったようだ。その時の話の半分は友達の恋愛成就のために俺がどう立ち回るのかといったこと細かい戦略についてだった。
当日、俺はYシャツにパーカーを合わせた無難な格好で挑んだ。集合時間5分前に駅前に到着すると友達が先に待っていた。気合い十分ですといわんばかりに黒のスキニー、白いTシャツに初めて見るジャケットを羽織っていた。俺を見つけるなり、さっきまで腕時計とにらめっこしていた顔を緩めて駆け足で近づいてきた。
女性陣は集合時間の10分後にやって来た。最寄駅からの電車が遅延していた、と聞かなくても向こうから教えてくれた。時刻は11時40分。元から映画を見る前に昼食を食べてからの予定だったので、遅刻は大した問題ではなかった。店は友達が念入りに調べてくれたテラスのあるパスタ専門のお店だった。四人掛けの丸テーブルに全員が中心を向くように座った。俺から時計回りに友達、友達の気になっている人、その友人。最初に気が付くべきだったのだが、友達が友達の気になる子との会話に花を咲かせている間、見ず知らずの二人が残された。そんなところから俺と彼女の出会いが始まる。
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