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つまらなそうにパスタを巻く彼女に俺は声をかけることにした。
「名前ってなんていうんですか?って俺から言った方がいいか。え~と、俺は『加藤 大悟』っていいます。…初めまして。」
彼女は俺に合わせるように会釈を返す。
「『水城 詩織』です。今日はよろしくお願いします。」
彼女は可愛いより美しいなんて言葉が似合う女性だった。友達の気になる子も可愛いアイドルみたいな子ではあったが、俺の好みとは違った。だから綺麗だな~なんて思っているうちに俺は彼女に惹かれていた。
食事を終えた俺たちは目的の映画を見に映画館を目指して歩いていた。
「映画、楽しみだな。」
上手いこと気になる子との距離を縮められた友達は嬉しそうに声をかけてきた。そう、今回の目的は映画だ。今から見る映画は有名な作品ではないが、俺みたいなコアなSFファンから期待大とされている待ちに待った作品だ。あの監督とあの制作会社のタッグ。元は映画も俺の方から見に行かないかと誘ったくらいだった。
「そう、今回は好きな監督さんとのタッグだから楽しみなの。」
女性陣も同じような話をしていた。どちらかというと水城さんの方が興奮しているようだった。さっきの声も水城さんの声だったらしい。チラッと見たそのときの楽しそうな彼女の表情は今でも忘れない。
それから水城がSF好きの仲間として一番理解し合える人になった。呼び捨てでため口で話せるようになったのはいつからだったろうか。好きになるまで時間はかからなかった。今思えば初めて会ったときから一目惚れだったのかもしれない。四人で出かけることが増えて、二人で出かけることが増えて、告白するタイミングも何度かあった。
その日も二人でSF映画を見た帰りだった。帰り道、水城と映画について語り合った。ある程度すると熱も落ち着いてきて静寂の時間が流れた。
「あ、あのさ。」
「うん。」
「水城って彼氏いないじゃん?」
「うん。」
「俺たちSF好きで話合うじゃん?」
「うん。」
「今日も映画見に行ってさ。」
「うん。」
「だから、俺たち、付き合わない?」
水城からの返答は無かった。
俺は彼女の方を向いてもう一度、言葉を紡いだ。
「好きです。俺と付き合ってください。」
「…うん。」
俺たちが付き合うことになった報告は次に四人で会うときにすることにした。
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