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結末
彼は照れたように笑ってあたしを見つめる。
「君の応援、本当に有難かった。
こんなにダメダメな俺を、励まし叱咤し、ここまで引き上げてくれた。
感謝してもしきれないよ」
「だけど、俺、この先は一人で歩いて行けると思うんだ。
彼女っていう頼もしい伴侶も得られたし。
だから…もう、大丈夫だよ。
今まで本当にありがとう」
そう言って手を差し出す。
え?なに?
握手?
「いや…そうじゃなくて。
俺の部屋の鍵、返してもらっていいかな。
彼女との新居に引っ越すんだ」
あたしは混乱したまま、とりあえず鍵を渡す。
彼はにこっと、あたしの大好きな笑顔で笑う。
「ありがとう!
またケーキ食べに来てね!
奥さんのことも紹介するからさ」
じゃっ!という感じで爽やかに去っていこうとする彼に、あたしはすがるように訊いた。
「ちょっと待って?
あたしって…あなたの何?」
彼はあたしの言葉の意味を図りかねると言うように、不思議そうに答える。
「え?っと…
俺のよき理解者で応援してくれる人?」
は…
唖然として言葉もないあたしに「じゃあ…行くね?気をつけて帰って」と言って彼は背を向け、彼女のもとへ走って行った。
あたしはすっかり暮れて真っ暗な橋の上に、一人取り残され…
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