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――黙ってればそれなりにイケメンだっつのに、なんでこうなったんだ!
そう、何もしなければ、女性に見紛うくらいの中性的な美少年なのである。中身が残念なだけで。残念すぎるだけで。いくら美形でも、殴られて鼻血垂らしながら喜んでいるようでは誰もよりつかないのである。
今後は別の黙らせ方法を検討しなければいけない。しかし、ぶっ飛ばしても喜んで起き上がってくる阿呆を、一体どうすれば止めることができるんだろうか。
「……で、今度は誰に惚れたんだっつの。お前が余計なこと言うから話脱線しまくって千四百七十九文字使っちゃったじゃねーか。規定八千文字までに話が片付かなかったらどうしてくれるんだ、ああ?」
「おおうみっちゃんメタい……そしてさりげない軌道修正ありがとうございマス」
「誰のせいだ、誰の!」
とにかくさっさと話を進めろと言いたい。こいつの与太話のせいでコンテストの文字数超過するとか全く笑えもしないのだから!
「ズバリ!尾木さんです!」
そして彼は、ドドーン!と言わんばかりに右手の人差指を天井に向け、宣言した。
部室に落ちる、沈黙。
我がサッカー部が誇るエースストライカー君が、ぼそっと後ろで呟いた。
「……誰だよ、尾木」
まさにそれ。うちの部員ではない、ということしかわからない。ついでに、あたしが知っている限り、二年の同級生にも同じ苗字の奴はいなかったような気がする。
「誰なのか知りたいか?知りたいかきょーちゃん?」
その一年生ストライカー君に、ぐいぐいと顔を寄せて詰め寄る聖也。顔が近すぎる。これはあたしが上級生として守ってやるべきか。ストライカー君はドン引きしながら、ずりずりと壁際に後退している。
「し、知りたいですよ。……主に被害者を増やさないために」
「被害者なんて酷いや!俺はただ純粋なアイの話をしてるだけなのに!」
「露骨なセクハラして罪悪感ゼロな人に人権はないと思います」
おい、後輩にここまではっきり言われる先輩どうなんだよ。呆れ果てつつ、小さく拍手を送るあたしである。よくぞ言った、という意味で。
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