3人が本棚に入れています
本棚に追加
今は、12月の…いつか。
前に妹が「12月はクリスマスがあるから楽しみ!」と言っていた。
街中が赤や緑の色に染まっていて、所々にある看板やポスターにはクリスマスと綺麗に書かれている。
これはもう、「12月です」と言っているようなもの。
でも僕にはクリスマスなんて関係ない事。
サンタさんなんていないんだしクリスマスは関係ない。
サンタさんがいるなら、もうとっくに僕の欲しがっているものをくれてると思う。
僕の欲しいもの、それは幸せ。
サンタさんがいるなら僕は幸せが欲しい。
「はぁ…誰でもいいから僕に幸せをくれないかな」
「何やってんの?大丈夫?」
ふと、上の方から声が聞こえたのでゆっくりと顔をあげる。
僕の目が捉えたのは、身長の低めな男の人。
手を服のポケットに入れて、マフラーも巻いていた。
その人は、黒色の髪を風で揺らしながら僕の事を見ていた。
「おーい。大丈夫?」
白い息を出しならが僕にそう告げる。
「ぇ、っと…だい、じょぶ…?です…」
僕がそう答えると、なぜか男の人は僕を上から下までじーっと見てきた。
「いや、どう見ても大丈夫じゃねぇだろ。住むとこあんの?見た感じなさそうだけど」
住むところ…
そんな所、とっくの昔にないよ
…なんて言ったら心配をかけてしまいそうだし言えないな。
「あ、ります…」
渋々、そっぽを向いてそう言う。
嘘をつくのは知らない人にであっても、すごく傷つくものだ…
「そうか、ないのか。」
え、なぜバレた…
そんな事を思っていると、男の人が「顔に書いてあんだよ」と言って笑ってきた。
少し笑ったあと、考えだした。
この人は何なんだろうか…
「住むところねぇんだったら俺の家に来いよ。俺一人暮らしでさ、寂しいんだわ。お前は一人で寂しくねぇの?お前さえ良ければ俺の家に来いよ。」
いきなりそんな事を言いだした。
嘘はついてなさそうだ。
でも、初めてあった人になぜそんな事を言えるのだろうか。
不思議でたまらない。
だが、僕はずっと、そういう言葉を待っていたのかもしれない。
だって僕、涙が出てきてるもん
「で、返事は?俺さ、このままだと子供を泣かせる悪いやつになんだわ」
男の人はあえてそう聞いてきた。
僕、こう見えて大人なんだけど…
まぁ、子供と言う言葉は無視しておこう。
それより、この人はもう、僕がなんて思っているのかわかってるはずなのに。
僕を試してるとかかな?
「いっ、行きたい!」
頭の中で変な事を考えながら男の人の目を見て返事をすると、男の人はにっこりと笑い、
「じゃあ決まりだな。俺は野田稔。今日からよろしくな。で、お前は?」
と、優しく言ってくれた。
「僕は葉月です」とためらいもなく答える。
名前を言うと、「葉月な、よし覚えた。まぁ、家に帰るか。今日からお前んちでもあんだから覚えておけよ?」と言って、僕の手を握ってくれた。
野田さんの手は、さっきまでポケットに入っていたにも関わらず、すごく冷たかった。
でも、なぜかすごく暖かく感じて弱々しく握り返した。
最初のコメントを投稿しよう!