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ふとした拍子に、あの問題児のことを思い出した。
仕事や同棲の準備、結婚に関するあれこれで忙しく、いつの間にかすっかり頭の隅に追いやられていたが、久しぶりに顔が浮かんだ。
藤島くん、きみはわたしにとってその程度の存在です。
わたしは今、忙しいけれどちゃんと幸せで、卒業した生徒のことなど思い出している暇はないのです。
ってこんな言い方、先生がしちゃいけないのかな。
生徒のひとりひとりを思って行動するのが、先生だものね。
でも、きみは3年間ものあいだ散々わたしをからかったのだから、このくらいの仕返しは許されるでしょう。
仕返しと言えば、最後にしたわたしの精一杯の意地悪は、ちゃんと受け取ってくれたかな。
時は流れていく。
きみにとってあの恋が、忘れられるものになってくれたら、わたしはうれしい。
うっかり思い出してしまう、そのときまで。
「ありがと、藤島くん。大学生になっても、元気でね」
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