いつかは忘れる恋だった。

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「今日もかわいいねー、アカネちゃん」 「その服似合っているよー、アカネちゃん」 「愛しているよー、アカネちゃん」  一度そういうキャラになり切ってしまえば、あとは意外と簡単だった。  軽いノリで、ひょうひょうとして、かわいい子には誰にでも言っているような慣れた感じで、おれは先生に言い続けた。  そのたびに先生は「ありがと」と気軽に応じてくれた。  軽く受け流してくれた。  そのくらいが、おれには心地よかった。  年の離れた仲のいい姉と弟という感じだ。  それでこの3年間、少なくとも先生のそばにはいられた。  デートみたいなことも一度や二度、した。  こういうキャラだから、多少近づき過ぎてもそういうもんだと片付けられた。  先生にとっても、自分にとっても、それはきっとラクで、楽しい関係だった。 「でも藤島くん。そういうのは本当に好きな人にだけ、言ってあげなさい」  先生。  この3年間おれはずっと、そうしてきたんです。
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