12人が本棚に入れています
本棚に追加
学生は春休み、しかも今日は世間的には休日。
だけどわたしには仕事があって、学校に行っていた。
その仕事も終わって、いまは家に帰る途中。
わたしはじきに入籍して、彼と一緒に住むようになる。
そうすればこの道も通らなくなるだろう。
そう思うと少し、寂しくなった。
平凡な田舎道で、特別に何かあるわけじゃないのにね。
と、そのときだった。
わたしの行く先、川の上にかかった橋の向こうに、見知った人が立っていることにわたしは気がついた。
藤島くんだった。
卒業後は都心の大学に行くと言っていたけれど、まだ引っ越していなかったんだ。
そんなことを思いながら歩いていくと、藤島くんもわたしに気がつき、近づいてきた。
まるで、わたしを待っていたみたいに。
橋の真ん中で、わたしたちは向かい合った。
日が沈み、あたりは暗くなりかけていた。
「どうしたの藤島くん、こんなところで」
わたしは訊ねた。
藤島くんの様子がいつもと違うことは、すぐにわかった。
その表情は真剣で、怖いほどだ。
だけどわたしは、いつも通りに微笑んでみせた。
最初のコメントを投稿しよう!