160人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん?」
「さっき言ってたことだけど」
「うん」
さっきとはいつのことだろう。そう考えなかったわけではない。しかし答えはすぐに遼人の口から教えられた。
「朔の割と本気」
「あー、うん」
「あれな、考えたんだけど……」
遼人にしては珍しく奥歯に物が挟まったような物言いに、朔良は「うん」と頷いて先を促した。
「朔の考えてることはわかったし、尊重したいと思う。だけど、やっぱり今の状況じゃあ諸手を挙げて賛成ってわけにはいかない」
「……うん、わかる。それ、俺も考えてた」
「本当に?」
「うん。一時しのぎじゃダメなんだって、確かに最初の一歩って大事だけど、二歩目のこと考えてないとダメだって」
「だな」
「――だね」
遼人は再び珈琲に手を伸ばすと「この話終り」と独り言のように言い、カップの中身を飲み干した。
「よし。寝る」
そう宣言して遼人はマグカップを手に勢いよく立ち上がった。
「うん。おやすみ」
見上げてそう言えば、遼人は「おやすみ」と手を振って去っていく。
その頼もしい背中にもう一度礼を述べると、朔良もまたブランケットの準備に自室へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!