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「はーい、じゃあホントに行ってきます!」  玄関に置いてある傘を手に持ち、朔良は勢いよく扉を開いた。 「え? うわっ! ちょっと!」  しかし扉を開けてすぐに、朔良は素っ頓狂な声を上げた。  リビングに引き返していた遼人が何事かと戻ってくる。 「遼っ! ちょっと! 遼、来て!」 「なんだ、騒々しい。近所迷惑だろ」 「だって、ほら!」  開け放った扉の向こうが遼人に見えるよう朔良は身体をずらし、ノブに手を掛けたまま自分も外を見る。  ずんずんと近づいてきた遼人は、朔良がいうものを確認した途端、無表情にノブを握った朔良の腕を取って引き寄せるように扉を閉めた。 「え? あ、いやそれ、ひどくない?」  目の前で引かれた扉を閉まるまで見つめてから、朔良はゆっくりと遼人を振り返り抗議の声を上げる。 「いや、でもウチ勧誘とかお断りだから」  顔に張り付けた笑顔で遼人は言うが――。 「いやいやいや! 今のはそういうんじゃなかっただろ? 二号……だったよな?」  玄関先に姿勢よくちょこんとお座りをしていたのは、間違いなく一号と一緒に行ったはずの二号だった。 「どうしよう、遼? 一号に何かあったのかな?」 「さあなぁ」 「なんで戻ってきたのかな?」 「さあな、知るか」  遼人はあくまで無関心に言い放つが、朔良には無理だ。 「遼……」  すぐにでも扉を開けてやりたいのに、それをさせまいとする遼人に腕を掴まれたままだ。
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