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「そう言えば、二号の名前考えたんだ」
朔良がそう言ったのは、希望通りのハンバーグの夕食を終えたあと、順番に入った風呂から遼人が帰って来たタイミングだった。
ローテーブルの上にあまりはかどっているとは思えない数学の課題を広げた朔良は、右手にシャーペン、左手で二号を撫ぜながら濡れた髪をタオルで拭いている遼人を呼び止めた。
「名前?」
「そう! 二号っていうのはあくまでも区別のためだっただろ? だから」
それはいずれ里親の元に行ってしまう一号に情が移らないようにするためのものだった。
とはいえ、一号二号はなかったなと遼人は常々思っていたのだが、その発案者も朔良だったはずだ。
「……まぁ、確かに響きがいまいちだしな」
「だろ? 一号だってもう新しい名前をもらってるんだし、二号にも必要だろ?」
「で? 一号はなんて名前になったんだ?」
「みるくだよ、みるく。女の子らしくてかわいいよね」
「確かに。で、二号の名前は?」
「うん」
朔良は近くに伏せの姿勢で寝ころんでいる二号の背を軽くポンポンとリズムを付けてタッチすると「二号?」と呼んだ。
「二号、今から大事な話するから、ちょっといいかな?」
呼ばれて、閉じていた目を薄く開けて眩しそうに見上げる二号に、朔良はもっとこっちにおいでと手招きした。
ゆっくりと体を起こして朔良の前にストンとお座りをする様子を見ながら遼人は、もう二号でもいいんじゃないかと思ったが、さすがにそれを言うのは憚られる。
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