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「名前、考えたんだ。気に入るかわからないけど、受け取ってもらえたら嬉しい」  まるで二号は人の言葉を正確に理解しているかのように、その場で足踏みをするとゆったりと尻尾を左右に振った。  遼人も何となく神妙な心持ちになり、その場に腰を下ろし見守る体制に入る。 「二号? 今からお前は――げっぱく、だ」 「げっぱく?」  聞き慣れない単語に、見守るつもりでいた遼人から声が漏れた。  不思議な音の言葉だと思った。日本語なのだろうが、音からうまく漢字が導き出せない。 「そう、『月』に『白』で月白。こいつの毛って一見真っ白だけどよく見ると細いせいかキラキラしてて、所々銀色にも見える。そんなところがまるで月の光みただなって思って」 「なるほど」 「月白っていうのは、色の名前なんだよ。ホントは真っ白って言うより少しちょっと淡い青が入った色らしいけど、響きが気に入って」  そこまで言って、朔良は自分の前にいる二号改め月白に向き直った。 「どうかな?」  朔良の問い掛けに月白は立ち上がると跳ねるような動きでその場を一周回った。 「よかったな、気に入ったみたいじゃないか」 「だね。というわけで、今日からはよろしくな! げっちょん」  月白という名前をもらって、左右に心地いいリズムで揺れていた尻尾が、ぱたりと止まった。 「げっちょん……?」  物言えぬ月白の代わりに、遼人が問う。 「あれ? 月白だから、げっちょん。え? かわいいだろ? ダメ?」  一匹と一人の反応に、朔良自身も表情を硬くして同意を求めたが、遼人は「さぁ、どうだろう」と言葉を濁し、月白はその場で伏せの体勢になり前足の間に顔を埋めてしまった。 「えー? げっちょん……ダメ?」  所在なく朔良は再び同じことを口にしたが、それに賛同する声は、なかった。
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