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「なに、桜木君はそいつのこと待ってんの? ならソレ鳴らせばいいじゃん」  掌の中のスマホを指されて、朔良は「あぁそうか」と頷いた。こちらから発信するという発想はなかった。 「え? で、桜木君はその天羽君と待ち合わせするような関係なんだ? なんか意外。入学生代表なんだろそいつ。――同中?」  中学校どころか小学校も最後は一緒だし、何ならその頃から同じ家に住んでるよ。――なんて、口が裂けても言わない。  好奇心をむき出しに聞いてくる相手になんの情報も与える気にはなれず、朔良はスマホを持つ手を上げた。 「連絡してみるから、ごめん?」 「了解。でもさぁ、その前に桜木君の番号教えてよ」  想像の斜め上をいく矢部の言葉に、目を見張る。そんなに親しくもない相手に番号を教えるつもりは、残念ながら、ない。 「やだよ?」 「なんで?」  なんでと言われても困ってしまう。 「俺、秘密主義だから?」 「なんで疑問形? いいじゃん、教えてよ?」  よくはない。朔良は矢部にばれない様にため息を吐いた。  なんと言えば、相手に諦めてもらえるだろうか――。 「いろんな奴と番号交換したくないんだ、ごめん」  一応考えてはみたものの結局うまい言い訳が見つけられず、朔良は正直に話した。 「……桜木君てさぁ」  自転車の前かごに入れたカバンの中から自分のスマホを取り出していた矢部は朔良の言葉に動きを中断して、まじまじと朔良の顔を見た。
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