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「いやぁ、俺もわからない……この子しかいなかったよ?」 「じゃあここにいる、こいつはなんだ?」 「知らないよ? 知らないけど、兄弟かな、よく似てる」  ファスナーの間から顔を覗かせた子犬をあやすように揺すりながら、朔良は遼人を見た。 「ついて来たというのか?」  一体どこで子犬を見つけたかは知らないが、そこからずっと後をついて来たと?  素人目に見ても、歩行が覚束ないほどのその小さな体で? 「ん、わかった。お前もこっちおいで?」  考えを巡らせる遼人を尻目に、朔良が声をかけ手を差し出すと、外にいた子犬は予想に反したしっかりとした足取りで遼人の横をするりと抜けて部屋の中に入った。  ――一瞬の違和感。 「あれ? ……もしかして、この子」  先に声を発したのは朔良。遼人はもう渋面を作っている。 「朔、最悪だ……招き入れたのはお前だからな?」 「あーやっぱり? でも遼もわかんなかっただろ?」  軽く朔良を睨み付けてから、遼人は廊下にまで上がり込みお座りをした子犬に視線を落とした。 「おい、お前。ここはお前のいるべきところじゃあない。とっとと出て行け」  言われた子犬は我関せずといった素振りで、ぷいとそっぽを向いた。 「まぁまぁ……仕方ないね」  対照的なのんびりとした口調で朔良はそう言うと、抱いていた方の子犬をパーカーから出し、しゃがみ込んで廊下の子犬の隣に下した。 「で? 二人は兄弟?」  二匹をそっと並べて見比べる。  突然床に下された方の子犬は朔良の手にじゃれついてご機嫌にしているが、後から来た子犬は、お座りの体勢を崩さずにそっぽを向いている。  毛の質感に色。目の色。そしてサイズ感――何から何までそっくりだ。 「すごい。本当にそっくりだね」  感動したと朔良は声を上げたが、遼人のため息交じりに自分を呼ぶ声に気がついて「でも……」と言葉を続けた。
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