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「行ってきまぁーす! あ、遼? 帰りにDVD借りてきていい? 俺めっちゃホラーもの見たい!」
買い出しに出かけるために靴を履きながら、玄関先で朔良はリビングに向けて声を投げた。
「だぁめ!」
キッチンで夕飯の準備に取り掛かっていた遼人からすぐに返事が返ってきた。
即答というヤツだ。
「なんで? いいじゃん、一緒に見ようよー?」
「ダメだろ。ホラーもの開始五分でやっぱりやめときゃよかった! 消してくれって騒ぐのは誰だ? いっつも途中で部屋に逃げ帰るのは誰だ?」
リビングから手を拭きながら遼人が現れ、捲し立てるように確認してくる。
「あー……それって、俺のことかなぁ」
「わかればよし。さっさと行ってこい、買う物わかってるな? ついでに好きなお菓子一つ買って来ていいから早く行け。雨降ってくるぞ?」
俺は子どもか! お使いに出される小学生か! という不満を飲み込んで朔良は「はーい」と返事をした。
本来なら今日の食事当番は朔良だった。それを「遼が作るハンバーグが食べたい」との我儘を飲んで了承してくれた遼人に逆らうことは許されない。
実家にいる頃は手伝い程度のことしかやったことのなかった遼人だったが、ここに引っ越して来てから本格的に料理を始めた。元から器用な遼人が本を片手に初歩的なものからではあるが習得するのは早かった。
朔良は祖父との二人暮らしで、経験上和食を中心に大抵のものは作れるが、遼人はそれを補うように洋食を作ってくれる。
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