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午後
机に向かい悶々と頭を抱えていた竹田さんは、ひっと小さく声を上げた。
「君に、お客様だよ。うちの上得意のマキタ様。今日はどうしても君に担当してもらいたいってきかないんだ。そもそも君はマキタ様と知り合いだったのか?」
呼吸を荒くしている竹田さんを意に介することもなく、上司は不思議そうに尋ねる。
「マ、マキタ様ですか? 私はマキタ様と直接お話をしたこともありませんけど……本当に私を指名されているのですか?」
「やっぱり妙だよな。でも、まぁ今お待ち頂いてるし……竹田君、私と一緒にすぐ来てくれ」
そう言われてしまっては、ついて行くより他はない。
その途中、サカノ君の横を通る。にこやかにこちらを見ていたサカノ君と、がっちりと目が合ってしまった。
何台かの車が展示してあるロビーに出た。
カップルが一組と、若い男性のお客様がそれぞれ、カタログを片手に熱心に説明を聞き、車を眺めていた。
そんな中、上司はまっすぐと窓際のテーブル席に座る男性のもとへと歩いていく。竹田さんもそそくさとその後ろをついて歩く。
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