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   あぁ、今日も朝が来てしまったなぁと少し憂鬱な気持ちで、竹田さんはベッドの上で身を起こした。  わぁーはぁーとあくびの中にも気合を入れた声を出し、大きく伸びをする。  安く購入した遮光カーテンからはさわやかでいて、そして強めな朝の日が透けていた。エアコンの冷房をつけるにはまだ早いかもしれないが、少々蒸し暑さを感じる。  窓を開けようかと勢いよくカーテンを開けた。  カーテンが揺れるその風にのって、なんだか妙な臭いがする。  何か、むせかえるような緑の臭い、夏の山の中で大雨が降ってあがったときの、植物と土の臭い。それに獣のような臭いもまざっているような気がする。  決して気持ちの良いにおいではない。カーテンも窓も、昨日の夜から一度も開けてはいないのに。それに昨晩は雨も降ってはいないだろう。  外は関係がなく、カーテンが臭いのかもしれない。眉をひそめながら窓を開けてみた。  暑くなりかけのもわっとした空気が入ってくる。すると、何故かさっきまでの嫌な臭いは急にわからなくなった。  そのまま何気なく網戸越しに視線を落とす。  この窓から下を見ると、住んでいるマンション入り口にある、赤い自販機が目に入るのだが、珍しく、その自販機の前にロングヘアーの女性が立っていた。
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