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 ただの幽霊ならまだマシだった。  夜中に背後に立たれると正直ビクッとはするが、彼らはただそこにいるだけで、危害は加えてこない。    しかし悪霊は厄介だ。  軽いものなら肩凝りがひどくなったり腕が上がらなくなるくらいのところから始まり、よく転ぶようになったり熱が出たり、ひどいときは車が突進してきたり半分乗り移られたり窒息しそうになったりしたこともある。  これはすべて悪霊の仕業である。    陰山はとことんそんな奴らに好まれる。  他の人間の肩に悪霊が乗っているのもよくみるが、陰山が近くを通ると、何故か「あれ、乗り心地よさそうな奴いるなあ」とでもいいたげにフラ~っと陰山の方へやって来てしまう。  理由はわからない。  これはもう、そういう体質、としか言いようがないのかもしれない。  いつのまにかいなくなったと思えば、コンビニに行こうと夜道を歩いただけで、気がつくと新しい悪霊が肩を占領している。たまに何人も同時に乗るものだから満員状態になったりもする。    そんなときは肩が重いのなんの、息が苦しいのなんので、学校なんて行けるわけはなく、中学で陰山はよく学校を休んだ。  中学校の人間関係なんてものは良くも悪くも単純なものだ。学校に来なければ段々と周りに人は減っていく。  いつのまにか中学校で陰山は孤立していた。  幽霊が肩に乗っているおかげで他の人より負のオーラが漂っているせいもあり、元から友達が出来にくかった。  それに加え、これも悪霊の仕業であるが、陰山の近くにいると何かしらの不運が起きるため、あいつといると呪われるぞ、という噂が広がり、より声をかけてくる人間が減ってしまった。  そして卒業を迎える頃には、陰山はほとんど不登校状態になっていた。  クラスにいても、コソコソと下らない噂話や陰口を話されるだけだ。  生徒の誰かに話しかけたとしても、あからさまな作り笑いを浮かべられるし、距離をとろうとしている姿勢が見え見えだ。最悪無視をされたり、悪態をつかれることまであった。  気づけば陰山自身も、なるべく人と関わることを避けるようになっていた。  一日中人と一度も会話しない日さえあった。    人間が嫌いになっていた。  悪霊に取り憑かれていることもうんざりするほどの苦痛ではあるが、人間といる方がよっぽど辛く感じた。    クラスメイトが自分に向ける冷たい目線や心ない言葉。  その度に、    いっそ自分も幽霊になってしまいたい。  誰からも認識されない、いない存在になってしまいたい、  消えてしまいたい。    何度だってそう思った。                
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