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朝比奈 光―――生まれつきの明るい茶髪に、くっきりとした二重の大きな茶色の瞳。いつも人懐っこそうな明るい笑顔を浮かべ、日に焼けたやや褐色気味の体には程よく筋肉がついている。体はスラッと長く、鼻の高い整った顔立ち。誰がどう見たって夏の似合う爽やかな好青年だ。
その上所属している水泳部ではまだ二年生ながらにキャプテンの補佐を務めているし、生徒会や体育祭の実行委員にも自ら立候補する積極性の持ち主である。
誰にでも分け隔てなく明るく接するし、クラスのムードメーカーではあるものの決しては羽目は外さない。勉強も運動もできて、少し天然だなんていうギャップも持ち合わせている、つまり完璧すぎる男だ。
もちろんこのハイスペックな男が人気が出ない訳がなく、朝比奈の周りにはつねに人が集まる。
朝比奈を見て女子たちはキャーキャー黄色い歓声を上げるし、男子は金魚のフンのように朝比奈のいくところについてまわる。
もちろん教師たちからの評価も上々で、朝比奈なら大丈夫と絶対の信頼を置いている教師も少なくない。普段生徒のことを苗字で呼ぶ増渕先生が朝比奈のことだけは光と下の名で呼ぶのも、無意識の内に他の生徒よりも親しみを感じているからだろう。
そんな、知らぬ人はいない学校一の人気者、名前の通り太陽の光のようなこの男のことが、
陰山は大っ嫌いだった。
この天真爛漫という言葉が何よりも似合う純粋で汚れなどまるで無いようなこの男。
クラスの女子たちが朝比奈に熱い視線を送りながら、こそこそと話していた言葉を思い出す。
明るくて優しくて、悪いところなど一つもない!
お人好しで素直で、嘘が苦手な誠実な男子!
いやそれは真っ赤な嘘だ。
こいつは俺の人生の中で、最も最低最悪のホモの偽善者野郎だ。
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