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5話 初デート(2)
莉緒菜と彼方は水族館にいる。
今日は頑張った莉緒菜に彼方が水族館デートを誘ったのだ。
莉緒菜は少し困った顔をした。
確かに、一緒にいる事で見える景色は違うだろう。
契約がある以上、莉緒菜は勝手に彼方から離れられない。
そう、彼方との契約はまだ果たされていない。
それは、莉緒菜が快楽によって壊れること、たまたま見つけた出逢い系サイトにて莉緒菜はカナタという人の記事に夢中になった。
そして、出逢い今に至る。
扱いは一応、契約を除けば婚約者なのだ。
自分の母校の教員以外に御曹司もしている彼方は将来を約束された彼方家の次期当主様で権力もそこそこある。
だから、目をつけられたら最後という少し怖い噂も知っていた。
そんな、彼方が今横で一緒にデートしているのだ。
彼方のそんな優しい一面に莉緒菜はかける事にした。
「彼方? あ、あのね」
オドオドと話し始める莉緒菜に彼方は首を傾げる。
「どうした? 浮かない顔をして、何もしていないのだから、素直に楽しめるだろう?」
その問いかけは最もで、普段な強引で命じてくる彼方からは想像も出来ない。
莉緒菜は勇気をだして話した。
「その、契約の話なのだけど」
その言葉に緩んでいた彼方の表情がこおりのようにすぅーっと冷たくなっていくのがわかった。
「あ、あのー」
慌てて同じ言葉を口にしたのは彼方が正直怖かったから……。
なんというか、その、言うことその物を許さないみたいな態度だったのだ。
莉緒菜は俯くと
「やっぱり、なかったことに……」
そう言えば彼方は急に苦笑し始めた。
「莉緒菜、お前さ、俺に何を言っているのか、自覚はある?」
その問いかけに彼方の優しい声色にビクリと莉緒菜は怯えた。
「ここ数日、一緒にいる事で、頑張ったお前への囁かなご褒美と思って来ては見たが、お前がそう思っていたとはな? なんなら、このまま屋敷に帰るか? それとも、その言葉を反省する為にホテルに直行するか? 2択させてやる、好きな方を選びなさい」
その言葉に莉緒菜は嫌そうな顔をした。
「お前は壊れることが契約内容だろう? 夢見すぎてんじゃねぇーぞ、馬鹿!」
その罵声は彼方を好きになり始めていた莉緒菜にはあまりに重たくて莉緒菜が泣き始めると
「うぜーな、泣いてんじゃねぇーよ! この、変態」
そう言いながら莉緒菜に近づくと
「決めた、残りのデートは、教育してやる、来い!」
そう言いながら莉緒菜の腕を乱暴に掴むと高級ホテル街に向かい歩き始めた。
莉緒菜は涙を流しながら嫌がる素振りは見せずそのまま着いてくる。
そんな、莉緒菜に彼方は深くため息を着いた。
歯向かわれたのは初めての事だ、ホテルにチェックインして部屋に入ると
『どうするかな?』
と正直彼方は考えた。
ここには黒服もいない、そうなれば教えると言っても限界がある。
彼方は軽く莉緒菜を見つめた。
瞳を逸らし怯えているのか震えている。
彼方はため息をつくと
「莉緒菜、おいで」
その声は先程と違い優しくて莉緒菜がオズオズと近ずけば
「なんで、あんなこと言ったんだ? 契約違反だろう?」
そっと頭をちょこんと膝の上に乗せ莉緒菜の頭を撫でながら問えば
「ごめんなさい、私が悪いの」
震える声でそう言いながら涙を流す莉緒菜に彼方は考えるように天井を見上げた。
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