山葡萄

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山葡萄

「私も食べたかったのに」  一粒の山葡萄も残っていない籠を未練がましく覗き込む。 「分かった分かった、今度はオレが採って来てやるよ」  高い位置から降る声に、紫の瞳が揺れる。籠の底で冷たく光る小刀の柄を、強張る指先で撫でた。 「今度、か…あぁ、そうだな」 初出・2019年10月7日
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