染髪差別

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 ああ、今日も変わらずつまらない学校。  アタシの体操着は汚されるし、せっかく昨日リメイクした机はまたボロボロ。だけど今日も一日乗り切った、この後は楽しくバイトに── 「おい、白崎!お前何帰ろうとしてるんだ」 「はい?」 「今確認したら、課題がお前だけ提出されてないぞ!」 「え?そんな、何かの間違いです。さっきの授業が始まる前に、アタシも黒田さんに提出しましたわ」 「嘘を吐くんじゃない!黒田から受け取った課題のなかにお前のはなかったぞ」  え?なに…これも嫌がらせ?教室の端にいる黒田さんを見ると、ふいと視線を逸らされた。嗤っていないとこを見ると、故意ではないのかしら…?でも、何か知っている反応ね。 「黒田さんがアタシの分を紛失した可能性もあるんじゃないですか?以前から申してますように、アタシは黒田さん方から嫌がらせを受けていますから」 「なっ…せ、先生、違います!私、白崎さんから課題を受け取ってません…第一、嫌がらせなんてしてません!」 「ちょっと、嘘はやめて下さる?アタシ、ちゃんと前まで持っていって黒田さんに提出したわ!クラスの人もそれは見ているはず…」  周りを振り返る。けれどどこからも擁護してくれる声なんてない。 「白崎、自分が忘れたのにそれを人のせいにしようと押し付けるのは最低な行為だぞ。忘れたなら一言謝ることもできないのか?悪いことをしたらごめんなさいなんて、幼稚園児でもできるぞ!」 「ですから先生、アタシは…!」  ああ、ダメだ。  この目は、耳は、アタシの声なんて聞いてはくれない。   (なに、B組どうかしたの?) (なんかあのギャルっぽい人が課題忘れたの人のせいにしてるっぽい) (え、なにそれ。最低) (なにあの髪色、ヤバすぎ) (あ~あの人あれでしょ?援交してるってウワサの…) (うそ、きもちわる) (昨日塾の帰りアイツ見たよ、なんかケバい集団だなと思って…) (つかそれで遊び歩いて課題忘れたんじゃねぇの)  え、なによ、これ。  周りから聞こえる声が、すべて、アタシに向けられたナイフのようで。  なんで、話したこともないアナタたちにそんなこと言われなくちゃならないの?どうして… 「ねえ、白崎唯架って人いる?」  急に呼ばれたアタシの名前。だるそうな、でもハキハキした声。誰…? 「ア、アタシ…ですけど…」 「あー本人いてよかった」  な、何、この人…よくこの空気のなか気にせず入ってこれるわね…。  あ、でもすごくキレイにメイクしてる。よく見たらカラコン…グレーもキレイ。今度アタシも買ってみようかしら…って、そんな場合じゃなかった! 「これ、お届け物でーす」  そう言って差し出されたのは、今まさに話題になっていたアタシのノート…! 「こ、これよ…!先生、これがアタシの課題ノートです!!」 「ちょうど探してた感じ?よかったー」 「どうもありがとう…。でも、どこに…」 「さっきそこにいる…眼鏡の子とぶつかって。急いでたのか知らないけど、何も言わずに走ってったから、これ落ちてるの気づかなかったんデショ?」 「あっえっ、わ、わたし…おとして…?」  嫌がらせじゃ、なかった…。でも、やっぱりアタシのせいでもなかった! 「なんだ黒田、お前もうっかり者だなあ。次から気をつけろよ~」 「は、はい…!」  え、なによその態度。なに、笑って去ろうとしてるの?ねえ先生、アタシに言うことはないんですか?  くやしい。悔しい、悔しい…! 「あれ、先生謝罪はないんですか?」
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