空気読んでこ。

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 みんなと仲よく、喧嘩せず。仲間外れはいけません。  小さい頃そう教えられて、俺は素直にそれに従っていた。仲間に入りたそうな子には声をかけて、皆がボールを使いたいなら順番に。そうやってみんなで仲よくやっていた。だけど、成長するにつれ「正しい」ことが「正解」だとは限らないことを知る。 (お前なんでアイツまで呼んじゃったんだよ!) (え?だって、仲間外れは…) (真面目かよ!あーあ、空気読めねぇの)  空気読むって、何だよ。幼心に思ったことだ。 (なあ!今日の放課後公園集合な!) (メンバーこれでいいだろ?) (…うん!)  視界の隅に写った寂しそうな顔は、すぐに当たり前になっていった。  だって、ここにいる大多数(みんな)が笑顔だから。平和だから。大事なのは、空気。空気読んで、笑うこと。 「なあ、今日からあのゲーム、イベント始まるぞ!」 「まじ!?何時スタート?」 「10時!ちょうど1限目日本史だし、よゆーだろ!」 「あの先生なんも言わねぇもんな!」 「俺モバイルバッテリーも持ってきたから」 「マジ、ガチ勢かよ!」  え~この流れ、俺もやる感じ?俺けっこー日本史の授業聞いてるんだけど…。 「ユータもやるよな!?」 「お~もちろん!」  ま、いっか。断ったら白けるし。 「え~それでは授業を始める。今日は教科書109ページから…」 「せ、先生。前回の課題の回答がまだです」 「あ~そうだったな」 「えー!何で言うんだよー!せっかく忘れてたのに!!」 「こら、静かに。お前から当てるぞ~」  すげ。この空気でよく言ったな、橋本さん。 「アイツさ~マジ空気読めないよな。普通言わなくね?」 「俺課題やってきてないんだけどー!」 「橋本真面目だよな~さすが隠キャって感じ」  空気読むの下手なんかな。それともあえて?どっちにしろ生きにくそうな性格。 「橋本さんって確か係りなんじゃなかったっけ?」 「だからってさ~」 「面倒くせーよな」 「あー…まあだるいよなー」  ま、俺は昨日課題やったから勝ち組だけど。 「つうか、同じ橋本でもすげー違いだよな」 「それな。ブスと美人が同じ苗字とか、神様残酷だわ~」  や、お前らの発言の方が残酷じゃね?橋本さんに聞こえてんじゃねーの…。 「なあ、それよりイベント始まんじゃない?」 「うわ、やべ、出遅れた!」 「くそ、橋本め!」 「あはは、お前ガチすぎ」  あー、気まず。どんな顔してんだろ…。橋本さん、俺より席後ろでよかった。
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