バニシング・ツインに花束を

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「そう、落ち込むなよ。海でも見に行こうぜ」 「海?」  砂浜の、洒落た海岸なんてこの街にはない。  テトラポッドで護岸された、殺風景な港があるだけだ。  それでも、恭は海が好きだった。  波の音を聴くと、心が落ち着くんだと言っていた。 「そういう恭の一面とか、お前知ってる?」 「いや、知らなかった」 「これから知っていくつもりとか、ある?」 「恭のことなら、何でも知りたいよ」  恭の好きなもの、嫌いなもの。  知っているつもりで、実は知らなかったこと。  まだまだたくさんあるに、違いないのだ。
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