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(ダメーッ! 恭介、絶対にダメーッ!)
「だったら早く、出て来いよ」
恭介が、心の中の恭と会話しているんだな、と克彦は理解した。
なら俺も、とダメ押しをするように、そっと恭介の頬に手を触れた。
「恭、好きだ」
そっと、唇が触れた。
静かに静かに、唇を合わせた。
波の音が、聴こえる。
同時に、自分の心音がばくばく聞こえている克彦だ。
そっと、瞼を開いてみる。
まるで献血の注射針をにらんでいるかのようだった恭介とは違い、その瞳は閉じられていた。
と、いうことは。
「恭……?」
「克彦」
耳慣れた、優しい響き。
恭が、戻って来たのだ。
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