一七才の菊ちゃんへ

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先月、ひいおばあちゃんが死んだ。 96歳だった。 生前、歯も抜けて、髪も薄くなり、普段めったに日の光に当たらないひいおばあちゃんはこの世の生き物とは思えないくらい妖怪じみていた。 90を過ぎた頃からだんだんと記憶が不確かになっていき、ついには息子であるおじいちゃんのことさえ忘れてしまっていた。 ひいおばあちゃんは、どんなに腰が痛くても私を公園に連れて行って一緒に遊んでくれたし、寝る前には絵本を読んでくれたし、夏休みには習字やお裁縫なんかを丁寧に教えてくれた。 優しい人だった。
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