あの世あの時あの人に

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そういうわけで、今地元に帰って来た。仕事があったため遅くなってしまい、もう辺りは夜を迎えようとしていた。手紙に時間の指定はなかった。だけど、自然と早足になる。その橋がある場所まで急いだ。 早く会いたい、誰だか知りたい。そんな気持ちが背中を強く押す。 ふと、目にある一軒家が映った。その一軒家にすごく違和感を感じ、足を止める。 そうだ、思い出した。確かここは昔空き地があった場所。よく友だちとキャッチボールをして遊んだ場所。 なくなったんだ。昔のことが夢だったかのように思わせる、何気なさがつらい。 そこからはゆっくりと、まわりを見ながら歩いた。 駄菓子屋もない。公園もない。よく木登りをした大きな木もない。 僕の知っているものがほとんどなくなっていた。なんだかやるせない、悔しい。 これが時代の流れだ。今までは新しくなっていく世界が魅力的に見えていた。だけど違う、それだけじゃない。時代の流れというのは、もともとあったものを壊していく。大事な思い出も。 昔に戻りたい。 「大切なものは失って初めて気づくもの」 そんな感じの言葉があった気がする。今はその言葉に共感でしかない。 また、学生の頃に戻りたい。 特に、あの頃に...。
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