あの世あの時あの人に

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そうだ...僕が告白したあの日だ。 時は十年前にさかのぼる。 「ねえ!春風さん!」僕は勇気を出して、春風カオリに声をかけた。 「どうしたの?宮瀬君」春風さんは驚いたのか、少し目を泳がせていた。どうして僕がこんな美少女と知り合いなのか。理由は一つ。家が近かったからだ。そのため、通学路でよく会っていた。最初はお互い無視でいた。だけど、ある日春風さんが僕の髪を指差して「すごい寝癖ついてるよ」と言ってきた時から、なんとなく話すようになった。他愛もない話をひたすらしていただけだったが。 確かに、以前から話してはいたけど学校で話すことは一度もなかった。きっとそれで驚かれたのだろう。 「今日、ホタルのいる...橋の下っ!で待ってるから!!」そう言って、僕は春風さんの返事を聞かず逃げた。僕は今日告白することに決めた。ずっと前から好きだと、一年の時から好きだったと。 その日、学校が終わってすぐ橋の方へ向かった。来ないだろうと思っていたので、自分より先に来ていたと知った時かなり驚いた。 「好きです!付き合ってください!」僕の告白はシンプルだった。なんのひねりもなく自分の気持ちを素直に伝える。 断られたらすごく辛いけど、仕方のないことだ。そう思って挑んだ告白。答えは...? 何も言ってこない。僕は下げていた頭をゆっくりとあげ、春風さんのことをみた。春風さんは何かを考え込んでいるようだった。するとすぐに口を開き、 「私のどこが好きなの?」 「えっ...」 予想外の言葉にびっくりする。 どこが好き? 笑顔が素敵で、明るくて、面白くて、話しやすくて、優しくて、それに... 「可愛くて...」最後の言葉だけが声になって出てきた。 すると、春風さんは顔をしかめた。 「ごめん、私付き合えない...好きでもない人と」そうきっぱり言うと、春風さんは土手をあがって帰っていった。涙が頬を伝う。わかっていたことなのに、いざ言われるとすごく辛い。僕はその場に崩れ落ちた。 告白したその日を境に、カオリは学校に来なくなった。後から、留学に行ったことを聞かされた。そして、もう一つ。 『春風カオリはいじめられていた』 こんなことも聞いた。男子と仲の良いカオリは女子から結構反感をかっていたらしい。 それで海外に行ったという噂もあった。全然知らなかった。 でも、フラれて案外良かったのかも知れない。こんな無知な僕より、もっと彼女をわかっている、彼女をちゃんと守れる人の方が安心だろう。僕はそう思いながらも少しもやもやしていた。
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