二種とぼくの正体

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 様々な種類の花々が、溢れんばかりに大振りに生けられている。彫刻の施された白亜の支柱の上に、大理石の丸いテーブルのような台があり、その上に花が生けられた花瓶が置いてある。 「お花、すごいですね……」  思わずそう口にすると、メイドが「はい」と言い優しく微笑んだ。 「お履物は、お預かりいたします」  靴を脱ぎ用意されたスリッパに履き替えると、メイドが階段の方へ促してきた。スーツの男性は玄関扉の側に立っている。警備をしているのだろうか。  玄関の広間には真ん中に空間をつくるように、左右に分かれた階段がある。真ん中の奥まった先には、花が飾られている空間が。  メイドの後をついて階段を上って行く。大理石でできた階段は赤い絨毯が敷かれており、緩やかに美しい曲線を描いている。  二階に着くと、そこにもまた大量の花が飾られていた。階段はまだ上へと繋がっているが、メイドは二階の奥へと進んでいった。  広間の真ん中には花が飾られており、その左右には廊下がある。振り返ると、階段の後ろにも空間が見えた。  左側の廊下へ進むと、その奥行きの長さと部屋数の多さに驚いた。メイドはすぐに足を止め、重厚な扉をノックして中へと声をかけた。  中からの返事を確認すると、メイドは扉を開けた。すると、扉の向こう側に奈木さんが立っていた。  促されるまま中へ入ると、革張りのソファに案内された。メイドは紅茶を淹れると、テーブルに二人分のカップを置き、部屋を出ていった。  奈木さんは扉が閉まったことを確認すると、ぼくのほうに向き直った。
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