二種とぼくの正体

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 三日分くらいの下着と部屋着、スーツ一式その他諸々を三好さんが車に運んでくれた。あとは、おばあちゃんの写真も一緒に持って行くことにした。  全然なにも考えていなかったが、仏壇の世話ができないことが気がかりだ。仕方がないから、時間をつくって見にこよう。 「――…これで、全部です」 「承知しました。それと、戸締りのほうは、きちんと確認しましたか?」 「はい、大丈夫です」  戸締り、火元、コンセントは確認した。  返事を聞いた三好さんは後部座席のドアを開けてくれ、ぼくが乗り込むとドアを閉めた。そして車が発進すると、窓の外を覗きながら遠ざかる自宅を瞳に刻んだ。  これから一体どうなるのだろうか。  事故に遭った次は、他人のお宅へ住み込むことになるとは。不思議なことに、自分のことなのに、まるで実感がなかった。  どれくらい走っただろうか。自宅を出てから三十分は経っただろうか。  気がつくと住宅街の坂道を上り始めていた。住宅街と言っても、どこか違う世界に来たかのような雰囲気だ。なぜなら、どこを見ても豪勢な住宅ばかりが並んでいるから。  車は、坂道をどんどんと上っていく。よく見ると、電柱と電線が見当たらない。不思議な違和感の正体はそのせいなのか。  坂というよりも、もはや丘だ。  頂上付近に辿り着くと、住宅の門とは思えないほどに、大きく立派な門の前に車は停車した。すると、ゆっくりと門が自動で横に開いていった。  そのままふたたび発進した車は、門の中へと入っていく。その先には車道があり、周りには樹木が佇んでいる。
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