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おばあちゃん、そんなの嘘だよ。枝の上で可憐に咲いている子もいれば、地面に落とされた子も沢山いるよ?
一足先に旅立ち、地面の上で踏みつけられた花びらは、一見かわいそうに思える。でも、みんなが散っていった枝に最後に取り残された花びらが、一番気の毒だ。
だって、ぼくにはその気持ちが痛いほどにわかるんだから―――。
上の空だったぼくは、信号を確認することなく横断歩道に足を踏み入れてしまった。けたたましいブレーキの音が響き、反射的にそちらに視線を向けた。目の前に迫る自動車が視界に入った瞬間、全身に衝撃を感じて意識を失った。
―――…き、翔希。
「……ん、おばあちゃん……?」
「そうよ。もうー、びっくりしたのよ? こんなに傷だらけになっちゃって……かわいい顔にまで擦り傷つけて」
「おばあちゃん……おばあちゃん……!!」
なんで、どうして!? 大好きなおばあちゃんが目の前にいる!
「なあに?」
「おばあちゃんっ、会いたかった! なんで……なんで、勝手に一人でいっちゃったの!? ぼくを置いていかないでよ!!」
「やあね。翔希は大きくなっても泣き虫なんだから。ほら、泣かないの。かわいい顔が台無しよ」
大好きだった祖母の優しい微笑みが、目の前にある。ぼくが小さい頃から泣くたびに、祖母は綺麗な眉を下げて笑っていた。
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