桜のたとえ

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「おばあちゃんのせいだよ! 会いたかったよ! もう、ぼくを一人にしないでよ!!」  小さい子供のように泣いて喚いた。そんなぼくを見て、祖母は眉を下げて困ったときにみせる表情をした。 「翔希、よく聞いて。」  声を落とした祖母を、涙を流しながら見つめた。 「―――桜はね、最後の一つが花開くまでは、みんなで一緒に木にいるの」 「そんなの、うそだよ! 木に咲いている花もあれば、風に吹かれて飛ばされた花だってあった!」 「そうね。運命というのは時に無情なの。でもね、最後に枝に残った花はね、可哀想なんかじゃないのよ。運命の誰かに見つけてもらうために、そこにあるの。―――考えてみて? 最後に残った一つを見つけられたら、嬉しいでしょう? 縁起がいいと思わない? 運命に見つけてもらえたその子だって、きっと、幸せになるのよ」 「……でもっ、見つけてもらえるか分かんないじゃん! 力つきるまで、見つけてもらえなかったら……やっぱり可哀想だよ!」 「翔希……。きっと……、いいえ、必ず、あなたは幸せになれる。運命の人と巡り合って、幸せに暮らせる。大丈夫よ。あなたは一人じゃない」 「なんでっ、どこ行くの!?」 「かわいい、かわいい翔希。大好きよ。愛してる。大丈夫、おばあちゃんは、あなたの心の中にずっといるから」 「やだ! 行かないで! お願いだから! ぼくを一人にしないで!!!」  おばあちゃん!! おばあちゃん―――!!
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