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それは昔のことじゃった。
儂の先祖マイヤーデがまだ子供で、太陽が天を往く舟で運ばれておったころの話じゃ。お前達幼い兄妹は知るまい。その時分、今ではもう見られなくなくなった霊妙なるものがこの世を満たしておった。
地には男衆千人でも曳けぬ荷を軽々と運ぶ馬
翼を広げればハイツァーヌ諸島を覆いつくす鳥
吐息ひとつで大陸全土の風車をまわす巨人
その涙で万病を癒す貴婦人
このようなものは人々の暮らしとともにあった。
しかし【大流の時】を境にだんだんと姿を消していき、今では語り伝えるものも少なくなった。儂がお前たちに語るのはいにしえのことを後の世に伝えるためである。
兄妹は古老を見つめるとコクリと頷いた。
堅くならずともよい。温かいヌナ草の茶を飲むがいい。
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