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 よく晴れて眠くなるような昼下がり。  水彩絵の具で塗りたくられたような青空がどこまでも広がり、目を凝らせば宇宙が見えるのではないかと、空を見上げながら大学のメインストリートを千鳥足で歩く。  首が痛くなってからようやく頭を元に戻すと、目の前にあった鮮やかな緑が視界に飛び込んできた。ちょうどメインストリートの真ん中辺りにある大木の葉……はすでに枯れていたが、その下に輝くような眩しい緑が異空間から転移してきたみたいに存在していた。  これが噂の多久森(たくもり)さんか。  もう二年近くも通った大学なのに、緑に包まれた男の噂は最近聞いたばかりだった。噂によると多久森さんは上下ともに緑の服しか着ない。授業を受けていないときは、たいていメインストリートの大木の下にあるベンチに座っている。  法学部二年生で頭がいい。私の通う大学は、私立の中ではわりとレベルが高く、自分もダメ元で受けたくらいだった。法学部はダントツ。ロースクールも併設されており、法学部の生徒はだいたい法曹関係の道へと進む。
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