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「ねえ、見てこれ!すごい!」
彼が指さしたのは伏見稲荷大社の千本鳥居。
圧巻、その一言に尽きる。
息を飲んだ私の姿に満足したのか、彼は私の手を引いて千本鳥居に足を踏み入れた。
私たちは今新婚旅行で京都に来ている。
先月挙式をし、籍を入れた。
京都に来るのは2回目。1回目は中学の修学旅行だった。
彼は初めての京都にかなり興奮しているようで、なんとなくそのわくわくがこっちに伝わってきて私も楽しくなる。
旅行って思ったより楽しいものだ。
もしかしたら、彼との旅行が楽しいのかもしれない。そう思い、彼の顔をじっと見たら彼が照れながらどうしたの?と笑う。その様子にこっちまで照れてまった。
「そろそろ帰ろうか」
彼が言う。
日が赤くなり段々と暗くなってきた。普段ならもう少し…といいたい時間だけど私たちには明日もある。今日はあきらめておとなしく帰ろう。
そんな私の気持ちが伝わったのか彼が少し散歩しようと言い出す。妙案だと私は賛成した。
普段と違う場所を普段と変わらないペースで歩く。彼の優しさに安心する。
ふと、彼が私を抱き締めた。
ここは外で、人がいて、見られて、
なんて考えたけど気づいたときには私も彼に腕を回していた。
静かな時が流れる。
なんの言葉も交わしていないのに伝わってくる愛情、不安、決意。
私だって不安だった。
先のことを見るとわからないことだらけで。
今、結婚を決めたことも正解なのかわからなくて。
だけど、今、確信できた。
大丈夫、うまくいく。
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