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「おまえら2人、ホント仲いいよなぁ〜」 圭太の反対側で壁に寄りかかり、片膝を立ててハイボールの入ったグラスを片手にしみじみと呟くのは半ちゃんこと半田(はんだ) 和人(かずと)。 交際3年目の彼女と絶賛同棲中。 「や、別に仲良くないし…」 「とか言って、先月も2人でライブ行ってきたんでしょー?」 半ちゃんの向かい側で既にフォークを握りしめた手をガトーショコラに伸ばしているのは(たちばな) 真由香(まゆか)。 この中では1番早く結婚して5歳の女の子と3歳の男の子のママ。 今日は旦那さんにお子ちゃん達を任せて私の記念すべき30歳のバースデーパーティーに来てくれた。 「だってそれはミニマムの15周年ライブだし、デビューの時からのファンとしては行かないわけにはいかないじゃん!?しかも圭太が前から5列目のチケット取れちゃったんだもん!」 「てかさ、さえそのライブが原因で彼氏と別れたんでしょ?」 真由香の隣でさっきから私と圭太にスマホを向けてはカシャカシャと写真を撮ってるのは中谷(なかたに) 千奈(ちな)。 昔から、一生恋愛を楽しみたい!だから結婚はしない!と宣言している千奈は、つい最近6歳年下の職場の後輩くんと付き合い始めたらしい。 「えっ!?マジで!?ライブが原因で別れたの!?」 その隣、私の正面で箸で掴みかけた唐揚げをポトリと落としたのは秦野(はたの) 祐二(ゆうじ)。 2年前に結婚して、現在奥さんが待望の第一子を妊娠中。 「んー、まぁ、それだけが原因ではないんだけどね。ライブが決定打というか…」 何となく語尾を濁して、ビールジョッキに残っていた炭酸の抜けてしまったビールを飲み干すは、私、本日悲しくも…いや、めでたく30歳の誕生日を迎えた水島(みずしま)さえ。 誕生日を目前に8ヶ月付き合った恋人に振られ、今年も結局いつもの仲間たちに祝ってもらう羽目に… 「つーか、彼女の男友達に嫉妬するとか、そいつの(うつわ)がちっせーんだよ。ほれ、食え。」 と、ガトーショコラを雑に突き刺したフォークを私に差し出すのはさっきから…というか、昔からいつもふざけてばかりいる菅野(かんの) 圭太(けいた) そういう圭太も3ヶ月前に彼女に振られたばかり。
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