朝焼けの黄昏

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ベートーベンのピアノ協奏曲5番  『皇帝』 あの華麗な第一楽章。 あの人そのものだ。 それに続く、甘く切ない第二楽章。 私とあの人との間に、それは育まれるのか。 歓喜に満ちた第三楽章。 あの人にとって、私は歓喜の存在になれるのか。 どうにかして、あの人の特別な存在になりたい。 どうにかして、あの人を喜ばせたい。 私はその一心で、『皇帝』にのめり込んだ。 来る日も来る日も、何時間もピアノに向かった。 そして、あの人がしてくれる音合わせは何よりも幸せな時間だった。 そんなある日、レッスンが終わったときに、書いた手紙をそっと渡した。
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