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少し離れにある古い校舎は、宿舎からは死角になっている。
その2階のベランダからは、川の向こう側にある街が一望できる。
私は誰にも気づかれないよう、すぐに宿舎に戻れるよう、寝衣のままでそこに向かった。
あの人はまだ来ていない。
あんな手紙を手渡さなければ良かったのかと、今更ながらに後悔する。
朝風を受けて、古い校舎のガラス窓と木枠が擦れる音がした。
未明の空が拡がるなか、あの人は来てくれた。
修道院の生活では、こんな時間にしか、ふたりきりで会うことは出来ない。
この日から、私とあの人の秘密の時間が始まった。
未明にふたりきりで会うのは、あの人が出勤する月曜か金曜。
水曜日には通勤の都合で会えない。
それから、雨が降る日は中止。
そんなに特別なことをするわけではない。
おはようございます。
と言い、
おはよう。
と返してくれる。
それから少し話をして・・。
でも、いつしか、手が触れあって、そして、抱き締めあうようになった。
そして、すぐに宿舎に戻る。
ただ、それだけ。
ただ、それだけだけど、特別な時間だった。
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