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ある日、私は、ひとつ年上の女の子の視線が気になるようになった。
彼女はオーボエの第1奏者だった。
管弦楽団のチューニングは、彼女のオーボエのA(ラ)音で行われる。
そのチューニングの時、あの人とアイコンタクトをとっているとき、彼女はとても嬉しそうで、誇らしい表情をしていた。
私は気づいてしまった。
彼女が浮かべているその表情が、私があの人に向けている表情と似ていることに。
とてもとても似ていることに。
数日後、宿舎での夕食の祈りが終わった後で、友人らがこそこそと話をしていた。
オーボエの彼女が、レッスンが終わった夜に、あの人とあの場所で会っていることを。
まもなく、噂の真意を確かめるように、オーボエの彼女の耳にも入った。
彼女は否定しなかった。
むしろ、誇らしく笑みを浮かべていた。
私は彼女に聞き出す勇気はなかった。
あの人は、私にとって特別な人。
でも、あの人にとって、私は・・
私は・・
私は・・・・
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