彼女の願い

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 新幹線の扉が開くと、冷たい空気が襲いかかってきた。目の前には、ヒラヒラと雪が舞っている。  相変わらず雪が多い町なんだな、そんなことを考えながら僕は新幹線を降りた。  駅のホームを見渡し、改札口への道を探す。僕は初めて来た町でもないのに、旅行者と同じように辺りを見渡さなければならなかった。  それほどまでに町は変わってしまっていた。なにしろ、僕が最後にこの駅に来た時はまだ新幹線は開通していなかったのだ。開通に合わせて建て直されたこの駅は、もはや知らない駅と言っても過言ではない。  駅の外に出ると、アスファルトにはうっすらと雪が積もっていた。その雪にうんざりし、ため息をつくと、白い息が漏れた。  辺りを見渡すと、いくらか古い店舗やビルが残っており、記憶の奥底に引っかかるものを感じた。  何年振りにこの町に降り立ったのか、もう思い出すのも億劫なぐらいに、この町での記憶は凍りついていた。  ロータリー近くに溜まっていたタクシーに声をかけて乗り込む。温かな空気が僕を優しく包む。 「白岩霊園へ」  僕が運転手へと告げると、「かしこまりました」と声が返り、タクシーのドアは閉じられた。 「こんな雪の日に、どなたかのお墓参りですか?」 「ええ、先日、高校時代の友人が亡くなったんです。海外でどうしても抜けられない仕事があって、今日、やっと帰ってくることができたんです」 「そうですか。じゃあ成田からこちらまで直行ですかね? それは遠路遥々とこんな田舎まで」 「私もこの町出身でしてね、本当に久しぶりに帰ってきたんですよ」  そう言って、僕は窓の向こうを見た。流れる景色の中で雪が飛び交っていた。  
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