前世の記憶

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 ゴンちゃんが私をギュッと抱きしめた。 「俺は絶対に浮気なんかしない」 「当たり前。したら殺す」 「のりちゃんが言うと冗談に聞こえない」 「冗談じゃないもん」 「……俺はそれだけのりちゃんに愛されてるってこと?」 「そうみたい。じゃあ、もしも私が浮気したらゴンちゃんはどうする?」 「泣く」 「泣くの?」 「大泣きして戻って来てって頼む」 「私だって浮気なんかしないよ」  ゴンちゃんの膝の上に跨ってキスをすると、すぐにゴンちゃんの唇が追いかけて来た。何回も何回もキスをして確かめ合う。他の誰でもなく、ゴンちゃんがゴンちゃんで私が私であることを。 「プロポーズ……」 「え?」  ボソッとした声に目を開けると、耳まで真っ赤になったゴンちゃんがいた。 「クリスマスじゃなくて今してもいい?」 「私、クリスマスがいいなんて言ってないよね?」 「え、でも……女の子はみんなクリスマスにしてほしいものだって……」  ほー。そんなバカみたいな都市伝説を信じて、今まで私を放置していたのか、こいつは! 「プロポーズ、今してくれなかったら、一生結婚してあげない」 「ええっ⁉」  その後、人々の前世記憶は徐々に薄れていった。巷では政府の陰謀説が囁かれているけれど、私はどこかの脳科学者の実験か何かだと睨んでいる。ゴンちゃんが前世に懲りて浮気をしないと肝に銘じたなら、あの“前世記憶騒動”に巻き込まれたこともあながち無駄じゃなかったのかもしれない。  今日、私はゴンちゃんと結婚式を挙げる。  ま、こういうのを雨降って地固まるって言うのかな。 END
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