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「よくわかりました。あなたは俺の恋人でも妻でもない。お引き取りください」
ゴンちゃんの言葉に私はホッと胸を撫で下ろしたけれど、ミナはそう簡単に引き下がるような女じゃなかった。
「私の話を信じられないのも無理はありません。前世記憶だなんて急に言われても戸惑うだけですよね。でも、調べてもらえばわかります。本当にあなたは」
「安藤風太でした。でも、あなたは千鶴じゃない。そして、風太には妹なんかいなかった。実は俺も先週、前世記憶を取り戻したんですよ。まだところどころ曖昧だけど」
ガクガクと震え出したミナは、こうなることを予想していなかったのだろう。どうやら接触感染説は当たりみたいだ。そのことを知らなかった彼女は、自分が触れたせいでゴンちゃんに前世記憶が蘇るとは夢にも思わなかったに違いない。
「あー!」
突然、ゴンちゃんが大声を上げて手を叩いた。
「今思い出した。あんた、前世でも俺をストーキングしてたよな? 現世でもまた同じことを繰り返して刑務所に入りたいのか?」
ゴンちゃんに凄まれると、ミナは脱兎のごとく逃げて行った。狭い部屋に残されたのはゴンちゃんと私の二人だけ。
「のりちゃん、びっくりさせてゴメン。まだ最後までは思い出せてないけど、俺と大恋愛の末に結ばれた相手はのりちゃんだったんだよ」
ゴンちゃんの笑顔がぎこちない。そりゃあ、そうか。ハアッと私は盛大にため息を吐き出した。
「なんだ。ゴンちゃんも思い出してたのか」
「えっ⁉」
「あの日、私も彼女に出会ったでしょ? 前世記憶は接触感染するらしいよ」
ゴンちゃんは両目を見開いて、口をあんぐりと開けた。
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