藤堂平助

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それでも、隊務に私情を挟んではいけない。 「・・・行ってきます」 溜め息と共に呟いた声は、まだ、高い。 その呟きは、すぐに冷たい空気に紛れて消えた。 前夜は、非番だった永倉と原田が三人だけの、小さな宴を開いてくれた。 途中から飛び込んできた沖田も含め、全員が酔いつぶれてしまった。 平助は明日があるからと早々に抜けたが、後の三人はその後も飲み続けただろう。 なので、馴染みの顔の見送りは無い。 今も、屯所の中は静まり返っていて不気味なほど人気がなかった。 (やっぱり、山南さんは来てくれなかったな) 少し期待していた心が、しぼんでゆく。 (しばらく会えないから、最後にもう一度、二人で会いたかったな) 知らず知らず、平助は俯いていた。 慌てて、頬を叩く。
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