藤堂平助

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何を考えてるんだ。私は。 前川邸の門をくぐり、菅笠をもう一度深く被り直す。 野袴に背割り羽織。手甲、脚絆と、纏っている旅装束は、平助には少し大きい。 それから、小柄な体に似つかわしくない、二尺ほどもある刀がやけに目立っている。 今の平助を、原田あたりが見たら、子供のようだとからかわれそうだ。   池田屋での死闘を共にくぐり抜けた愛刀、上総介兼重は、池田屋で刃こぼれしてしまっていた。 研ぎに出すと、少し細身になってしまったが、どうしても手放す気にはなれず、まだこうして佩刀している。 その柄に手をおき、歩きだした。 それに合わせて、総髪にした髪が揺れる。 前髪で隠れた額のさらし。 その下の傷が、少し痛んだ気がした。
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